東京・豊洲市場のすぐ隣、2024年2月にオープンした話題のグルメモール「豊洲 千客万来」。
インバウンド需要も狙い海鮮和食を中心とした70店舗がしのぎを削るなか、メニューはハワイ料理のポキ丼と、一風変わった個性を放っているのが「POKE BOWL カナロア 豊洲千客万来店」です。なぜポキ丼なのか? そして「豊洲 千客万来」への出店に至った背景は?
オープンから数ヶ月が過ぎた2024年5月、3Fフードコートエリアにあるお店を訪ね、オーナーの伊藤豪さんにお話を伺ってきました。
(2024年5月22日 取材)
— 1号店が押上にあるんですね。
そうです。スカイツリーから歩いて2〜3分ぐらいのところなんですけど。
— 何年前にオープンされたんですか?
今年で3年目ですね。
— そして今回の豊洲が2号店?
そうです。ここは今年の2月からです。
— 今回、このカナロア2号店のオープンに至ったのにはどんな経緯があったのですか?
出店は、いい場所があればしたいなという気持ちは常にあったんです。
そしたら千客万来が豊洲市場の隣にできるって話をうかがって、仕入れの関係上、豊洲市場には毎日足を運んでいたので、入れたらいいなって言うので話を進めたら、あれよあれよと、出店できることになりまして。それで始めたという流れですね。
— 1号店と2号店でコンセプトは変えているんですか?
変えてますね。1号店はもう少し価格帯が安くて、平均単価が1,200〜1,300円ぐらいなんですけど、こちらの方は観光施設の中のテナントっていうのもあって、少し価格帯を上げ、使っている食材に原価をかけ、ちょっと豪華な感じにしてます。
— ちなみに押上のカナロア1号店が、伊藤さんが独立されて最初に開いたお店ですか?
そうです。
— そのときからハワイの丼(ポキ丼)をやるぞという考えがあったんですか?
そうですね。
— どういった経緯でポキ丼をやろうっていう考えに至ったのですか?
一号店の最初のころはゴーストレストランっていって、客席があって店内で食べてもらうっていう形ではなくて、キッチンだけを借りてウーバーイーツとか出前館とかのデリバリーだけをやる、そういった業態だったんです。
— まさにコロナ禍の最中に始められたわけですね。
そうです。それでいろいろマーケティングしたときに、どうやらウーバーイーツでは、例えばポキ丼もそうなんですけど、海外の屋台飯とか、海外の地元で食べられているローカルフードみたいなものが売れてる傾向があったんですね。
自分は独立する前は、豊洲市場の中にある仲卸で働いていたんですけど。
— あっ、そうだったんですね。
高校を卒業して、豊洲に移転する前の築地のころから自分で独立するまでずっと仲卸として働いてたので、仕入れのルートもあったりして、自分で何か飲食店をやりたいってなったときに、魚を使った料理でスタートしたんです。
— ちなみに仲卸の世界へは、いつか飲食店をやろうと思って入られたのですか?
最初はそうではなかったんですけど、自分で何か食べたり飲んだりするのが好きだっていうのもあって、やっぱり自分で何かやりたいなってなったときに、飲食業に挑戦してみたいなと思ったんです。
— そして1号店をオープンさせ、今回の2号店。成長している要因は何ですか?
こっちは2月オープンで数ヶ月なのでまだわからないですけど、押上のお店に関してはデータを見てると、店に直接来てくれるお客様もデリバリーで注文してくれるお客様も、リピーター率がものすごく高いんです。
「ポキ丼って何?」っていう方も多いので、まず一回来店してもらって食べてもらうっていう作業にはけっこう苦戦するんですけど、一回食べてもらえればリピーターになってもらえる確率っていうのが高くて。
出している商品、味もしかりだと思うんですけど、そういうところでお客さんを捕まえられたのがここまでこれた要因かなとは思います。
— 仲卸をやってきた強みは生きてますか?
そうですね。食品会社さんを通さずに直接市場の仲卸から魚を買うので、そのぶん仕入れが安いですし、毎朝豊洲市場で選んだ魚を自分の店に持ってくるので、鮮度も間違いなくいいものを提供してますので、そこは仲卸をやってて良かったなと思います。
— 今回、山翠舎に内外装を依頼されたのにはどんな経緯があったのでしょうか?
この千客万来って、お土産屋さんも含めると70店舗ぐらい入っているんですけど、だいたい和風の寿司、海鮮丼の店が多いんです。
そのなかではうちは唯一洋風、ちょっと変化球みたいなお店になるので、「そういうところも汲み取っていただいて内装や外装を作っていただける業者さんにお願いできたらな」っていうところで、知り合いで飲食店をやっている方に山翠舎さんをご紹介していただいたんです。
— 木を使いたいというのはあったんですか?
ありましたね。押上のお店だと、お皿とかも全部木の器で出してるんです。
ハワイのイメージって木のイメージがあると思うんです。なのでちょっとそういった雰囲気でお願いしたいなと。古木のイメージもマッチングしましたし。
館内が和のつくりなので、そこは崩しすぎずに、でもちょっと洋風なテイストでお店の外観を作れたかなと思ってます。
— いちばん気に入っているポイントはどこですか?
やっぱり梁ですね。存在感があるなあと。
あとパッとこのお店を見た時、手前は木材なんですけど、奥(厨房)は白のタイルになってる。コントラストと清潔感があって、これも気に入っているんです。
こだわったのはフードコートでの出店だったので、メニューパネルのサイズ感ですね。
そこは(デザイナーの)山岸さんとけっこう話し合った部分です。他のお店を見るとモニターパネルのところもありますけど、モニターだとけっこう値段が高くて。
うちは写真でやるしかないなってなったんですけど、やっぱり目立たせたいから、お客さんの目線が隠れないぐらいで限界まで大きくして、このサイズ感にしたんです。
— ここまでくるのに一番苦労したことというと、どんなエピソードがありますか?
デリバリーで始めたお店なので、コロナが明けた直後にお客さんの流れがどうなってしまうのか。
店内飲食もしてもらえるように席とカウンターを増設して、実際にお店に来ていただけるお客様をどこまで増やしていけるか、そこは苦労したところではありますね。
あとはもう、今回の出店の資金繰りが一番苦労しました(笑)
— 話題の千客万来、オープンも鳴り物入りでした。テナントとして入るにも高いハードルはあったのでしょうか?
有名なお店さんもありますし、個人店から大手の会社さんまでけっこう入られていますしね。
ただ千客万来側の意向としても、全部海鮮、お寿司ってなるとつまらなくなっちゃうから、何か海鮮でも色の違うお店を入れたいっていうので、うちはたまたまそこにハマったので入れたっていうのがあったと思うんです。
— オープンから3ヶ月ほどが過ぎ、どんな感じですか?
2月〜3月はオープンバブルもあってものすごく忙しかったんですけど、4月くらいから徐々に落ち着き始めて、今は少しゆったりとやれています。
— 今思い描いていることはありますか?
けっこう試作してるんですけど、パンケーキとか、あと、マラサダっていうハワイで食べられているスイーツとか。そういったいろんなものを、ハワイ料理から派生してやってみたいなっていう思いはありまして。
— それはカナロアの新メニューとして出すイメージですか?
はい、そうです。
あとほかには、ハワイとは関係ないんですけど、僕は生まれも育ちも中央区の月島なので、もんじゃ屋さんもいつかやってみたいなと。いろんな思いがありますね。
— 今日はありがとうございました。