東京生まれのご夫婦が、甲斐駒ケ岳の美しさに惹かれ山梨県で移住生活を送るなか、2020年1月にオープンさせるレストランがこの「Kaikoma kitchen」です。
地元食材を使った、地産地消型のイタリアンレストラン。
小さな集落にポツンとできた、素敵な一軒家の空間です。
オープン直前の2019年12月に、独立までの経緯など、ご夫婦にお話を伺ってきました。
— どんな想いでつくられたお店ですか?
貞和さん(以下、貞和):そうですね、地元、せっかく下教来石(しもきょうらいし)っていう地区の集落のなかに土地を見つけましたので、なるべく地元の人に通ってもらいたいと思ってます。
観光地っていう土地柄もあるんですけど、それより地元の人に来てもらいたい なあと思ってます。
— そもそもなぜ東京を離れこの土地を選ばれたのですか?
貞和:甲斐駒ケ岳っていうすごく綺麗な山に惹かれて、その山を見て暮らしたいなあと思いまして。
— いつ移住されたのですか?
東京を離れてこっちへ来たのは4年前(2016年4月)。
家は2012年にできていて別荘暮らしをしていたんですけど、いっそのこと別荘ではなく、ここに移り住んで住もうと。
— どんな特徴のお店になりますか?
貞和:土地柄、いろんな種類の農産物が地元で手に入るので、その地域の食材を使って、地産地消型のレストランを営んでいきたいなと思っています。
北杜市内で葉物野菜だったり根菜、
由美さん(以下、由美):夏はズッキーニ、トマト、ナスとか、
貞和:いわゆる夏野菜といわれているものは豊富にあって。
冬は逆に大根、玉ねぎ、カブと限られるんですけど、それでも十分使っていこうかなと思っているんです。
あとは畜産物でいうと甲州ワインビーフとかクリスタルポーク、信玄鶏。
— 地産地消型にしようと思われたのは?
貞和:せっかく引っ越して来たので、地元に貢献するっていうのが一番だなと思ったのと、
あとは地元に根付かないと意味がない。
そうなると、地元の生産物を使って活気のある田舎の風景を作りたいなあと。
— 移住したのが2016年。オープンまで4年近くの期間がありますが、その間は何をされてたのですか?
貞和:独立を前提に小淵沢のレストランで働いてました。レストランで働く前は、サラリーマンを辞めて、2015年度の一年間、東京で専門学校に通って、フランス料理とイタリア料理の専門コースで一年間学んでました。
— 貞和さんは、もともとはどんな仕事をされていたのですか?
貞和:ソフトウェアのエンジニアを、22〜23年間やってました。
— なぜ料理の道に入ろうと思われたんですか?
貞和:移住ありきですべて考えて行動したんです。
移住するにあたってソフトウェアのエンジニアはもう辞めよう、通うにしてもここから東京では大変ですし。
じゃあ他に何か仕事探さなきゃなってなったときに、ちょこちょこ週末料理を作ったりしてたので、料理の仕事に
就けば、どの地方でも雇いにしろいろいろ仕事はあるだろう。
で、料理の仕事に携わってみようと思いまして、最終的には独立しようと思っていたので、専門的な知識を身につけるため一年間、専門学校に通ったんです。
— 奥さんはこのお店ではどういう関わり方になるのですか?
由美:私は接客とデザートづくりです。
— 旦那さんから独立すると言われた時はどう思われました?
由美:青天の霹靂(笑)。
忘れもしないお正月に聞かされまして。でも、主人が決めたことは私がいくら言っても覆らないだろうことはわかっていたので、そんな反対はしなかったと思います(笑)。
— 内装空間でこだわったところは?
貞和:全体のレイアウトとしてはオープンキッチンにしたところです。
— それはお客さんとの距離感?
貞和:そうです。
由美:あと、ライブ感ですね。
— お店に入ると、まずホールみたいに空間がポンと空いてますが、東京の感覚からしたら、この空間構成は贅沢ですよね。
貞和:そうなんですよ。せっかく田舎でやっているので、空間自体を狭くしないことが、田舎ならではの贅沢だろうなと思いまして。
東京だと、どうしても小さいスペースに可能な限り席を詰め込んで、可能な限りお客さんを回転させて。
そうしないと家賃払えない、っていうパターンがあると思うんですけど、
ここだとそういうしがらみもないので。
— つまり、家賃がかからない、土地も買われたということですか?
貞和:はい、買ってます。
— これからどんなお店にしていきたいですか? 自分の生き方も含めて、どんなイメージを持たれてますか?
貞和:とにかく地元の人に愛されるお店になるっていうのが一番です。
早くご近所の方々の顔と名前を憶えて、名前で呼びかけられるようにしていきたいなと思ってます。
私自身はずっとソフトウェアエンジニアをやっていたので、3年で一昔前、5年で時代遅れ、っていう流れの早いところで仕事をしてきたわけです。
で、ふと、こういう古木っていう存在を思うんです。
何年経っても柱として、梁として生きていける、使い物になる。
そういう存在をしっかり自分の中に取り入れていきたかったっていうのはあります。
流れの早い時間に飲み込まれてせかせかと暮らすのではない、これからの暮らし方をするために。
細く長く。続けるっていうのが一番大事だと思ってます。
100m競争で金メダル取るより、マラソンでどんなに時間がかかっても完走する。
そういう価値観でやっていきたいと思ってます。
— 素敵な話ですね。それはご夫婦ともに同じ価値観なんですね?
由美:同じですね。