埼玉県川口市の「こみや酒店」(株式会社小宮商店:小宮秀樹社長)。1907(明治40)年にお米屋さんとして創業、のちにお酒も取り扱うようになったという、地元の老舗です。
2022年の5月、手狭になってきた既存店舗を拡張し、店内でお酒を楽しめる角打ちスペースも併設、装いもスタイルも大きく変化した“新生こみや酒店”としてリニューアルオープンしました。
今回リニューアルの中心となったのが、小宮社長の息子さんである小宮和樹さん。角打ちスペースのアイデアも和樹さんによるもの。酒店として、これからどうした方向へ進んで行くのか? 新しくなった「こみや酒店」を訪ね、和樹さんにお話を伺ってきました。
(2022年8月3日 取材)
今回リニューアルをしようと思ったのは、どんな流れですか?
リニューアルの計画は数年前からありまして。設備の老朽化だったり、店舗自体が狭く、通路も狭くて、車椅子とかベビーカーが通るには難しかったんですね。
ほかにも、取り扱ってるお酒が、品数的に以前の店舗だと入りきらなくなってしまったりと、いろんな要因があって新しくしようと。
外観も、以前の外観でこれからもやっていくのは無理があるっていうので、全部新しくして再スタートというかたちで。
店舗面積自体を広げたんですか?
1.8倍くらいになってます。
もともとお店の隣に自宅があって、それがもう築50何年とか古い建物で。たぶん次大きい地震がきたら危ないかなって、そういうタイミングもあったので、自宅を崩して、1階は店舗にして、この店舗の2階を住居にしたんです。
なので、以前母屋のあったところまで店舗として奥行きを持たせた感じです。
いろいろな酒店があるなかで、こみや酒店さんはどんな特徴をもったお店ですか?
うちの場合は郊外型の店舗で、車で来られるお客様とか、週末や土日はファミリーの方がけっこういらっしゃるんです。
都内とかだと、例えば日本酒に絞って専門的にやるほうが効率がいいと思うんですけど、うちの場合それだと生き残ってはいけないので、多種多様なお酒と、あと食品も扱ってます。
うちはもともとお米屋だったんです。一代目、二代目はお米オンリーでやってきて、三代目、私のお祖父ちゃんの代のときにお酒の免許を取って、今に至るんです。
今の店舗の特徴でいえば、こだわったものを仕入れてるところですかね。
以前の店舗だと、缶ビールとかペットボトルの焼酎が割と多く動いている状況だったんです。でも、近隣にスーパーができて価格はそっちの方が安い。
これでは意味がないっていうことで、スーパーさんでは取り扱っていないような、深く掘り下げたお酒を私の目線で探して、全国の生産者さんのもとを訪ねる。今はそうしたこだわりのお酒を置くようにしています。
全国というと?
まさに全国、北海道から沖縄まで。海外はそんなにしょっちゅう行けるわけではないんですけど、洋酒、ウィスキーとかワインも取り揃えながらいろんなところに取引先があります。
常時何種類、何本ぐらい在庫を持たれてるんですか?
全部で1万本…まではいかないかもしれないですけど、ざっと本数だとそれぐらいになるんじゃないですかね。
ちなみに今回、なぜ山翠舎に内装を頼もうと思ったのですか?
ホームページを拝見したのもあったんですけど、私が以前勤めていた会社が、事務スペースを山翠舎さんにお願いしてやってもらっていたので。
家業に入る前に、外で会社員をされてたんですね?
そうです。都内の酒屋なんですけど。
そこの本部が千葉にあって、その千葉の事務スペースを…。
あ、IMADEYAさんですね?
はい、そうです。
それで、事務スペースの内装を「山翠舎さんにやってもらった」っていうのを教えてもらって、それ以外にも何社か、3社ぐらい教えてもらって全部調べたんですけど、その中でも雰囲気的にも山翠舎さんが一番いいなって思いまして。
内装でこだわったポイントはありますか?
山翠舎さんからいろんな案をいただいて、何回も練らせてもらったんですけど、やっぱり予算があるので、古木は最小限にし、一見、木で作っているように見える天井もシートを貼る仕様にしたりと、抑えるところは抑えつつ、でも雰囲気はちゃんと出そうっていうところでやらせてもらいました。
入口から奥のワインスペースに向かって、だんだん雰囲気が変わっていくような印象があると思うんですけど、そこは意識しましたね。
既存のお客さんが新しくなった今の店舗に入ってこられたときにも「あれっ?」ってならないように。入口付近は比較的以前と同じような感じ。ビールとかパックの焼酎とかを残しつつ、だんだん奥に行くにつれ、よりこだわったお酒、伝えたいものが感じてもらえる。そんな雰囲気にしましたね。
角打ちは今回のリニューアルで取り入れたんですか?
そうですね。
それはなぜ?
私の以前の職場が、角打ちと物販を併設するような店舗だったんです。そうすると、直接その場で飲んでもらって買うことができる。そのスピード感がいいなって感じたんです。
やっぱり酒屋のような場所、たくさんのお酒に囲まれた中で飲むと、多少なりとも人って味の感じ方まで変わるんですね。美味しいと思えるし、そのまま購入に繋げてもらえる。
それが角打ちを併設した一つ目的で、あともう一つは、お客様と対面で話せる機会が生まれることです。というのも、こちらから接客に行っても「大丈夫です」って、けっこう言われちゃうことあるんです。でも角打ちのスペースがあれば、お客様とも話しやすくなる。
角打ちをやろうっていうのは、和樹さんのアイデアなんですね?
はい、私です。角打ちはやったほうがいいって、ずっと思ってたんです。
「この立地とマッチングするのか?」っていう不安要素はあったんですけど。
駅から遠い?(※ こみや酒店は南浦和駅から歩いて15分ほどの場所にある)
「駅から遠い」っていうところですね。
なので、平日はまあ、そこそこですけど、週末、土日に関しては予想してたよりも大勢の方が角打ちにいらっしゃってくれて、まずまず、やってよかったですね。
リニューアルして大きく変化したところはありますか?
売上が特別に伸びた、とかではないんですけど、既存のお客さんももちろんいらっしゃってくれる中で、今までいらっしゃってなかった、新しいお客さんが見えるようになりました。うちのセレクトを楽しんでくれるお客さんが増えてきてる印象で、お客さんの層が少し変わったと思います。
これからどんなお店にしていきたいですか?
うちのコンセプトとしては、あまりカッチリしたお酒屋さんではなくて、あくまで入りやすいお店。「初めてお酒を飲んでみようかな」っていう方や、「今までは日本酒しか飲んでなかったけど、ちょっとワインにチャレンジしてみようかな」っていうような方、そういう動きをこのお店で広げていきたいなっていうのがありますね。
お酒についてのいろんな発見ができる、柔らかい、優しいお店をまずは目指しています。
それが角打ちのスペースにも繋がりますし、そうしたいろんな要素をお店の中に組み込んでいきながら、SNSの発信も含めて、少しでも興味を持ってもらえるようなコンテンツを発信していきたいなと思ってます。