以下は山翠舎代表山上浩明(著)『”捨てるもの”からビジネスをつくる』より、小山正社長と代表山上との対談を一部抜粋しております。
株式会社フォンスの代表取締役社長 小山正さんは、長野県小諸市生まれ。
2000年に軽井沢町で「株式会社フォンス」を設立。
小山さんは、蕎麦や味噌、醤油といった長野県の特産品をブランディングし、日本全国や世界に発信している経営者です。
軽井沢では、最初にオープンさせた蕎麦店「軽井沢 川上庵 本店」を皮切りに、生活の中にあるアートをコンセプトにした「酢重ギャラリー」や「酢重ギャラリー ダークアイズ」、「ベーカリー&レストラン 沢村 軽井沢ハルニレテラス」など、たくさんのブランドを展開しています。
軽井沢と小諸をつなぐギャラリー「沼田商店」
小山:私たちは軽井沢で、2つのギャラリーを開設しています。
また、全国各地で展開している店舗でも、アート作品や調度品を展示しています。
以前から、これらのギャラリーの展示作品を保管する広めの倉庫を求めていたのですが、家賃の高い軽井沢で物件を探すのは非効率的でした。
また、ただの倉庫ではつまらないので、ギャラリー兼倉庫として使える場所がほしかったのです。
そうしたとき、軽井沢から車で30分の距離にある小諸で、良い物件がいくつかあると山翠舎から提案を受けました。
その中で、サイズ感が最も良さそうな沼田商店を選んだのです。
沼田商店は2階建てなので、1階はギャラリー、2階を倉庫に使うことにしました。
山上:小山さんとしては、軽井沢にあるギャラリーの常連客を、小諸に誘おうとする意図があったのでしょうか。
小山:そうです。軽井沢の市街は、碓氷軽井沢ICの出口から車で30分ほどかかります。
一方、碓氷軽井沢ICから小諸ICもだいたい30分の距離で、軽井沢を訪れる人にとって小諸は立ち寄りやすい場所なのです。
小諸にギャラリーの兼倉庫をつくれば、軽井沢との関係性が生まれて面白いと考えました。
それに、小諸には軽井沢にはない楽しさがあります。
古民家が醸し出す和の雰囲気のギャラリーを小諸につくれば、軽井沢の別荘に住む人や観光客にも楽しんでもらえるとも思いましたね。
山上:ギャラリーのコンセプトは、最初から固まっていましたか?
小山:はい。沼田商店の建物が持っている雰囲気を、最大限に生かそうとと考えていました。
常設展に加えて年に数回個展を開き、目の肥えた軽井沢のお客さまにアピールする狙いでした。
山上:アート作品を展示する場と聞くと、コンクリート造りのギャラリーや美術館をイメージする人が多いと思います。
沼田商店のような古民家をギャラリーに使うと、違和感は出ないのでしょうか。
小山:私たちは、フォンスが扱っているアート作品を「日常美術品」と位置付けています。
普段のくらしの中で、見たり触ったり使ったりするものであり、
住宅や民家のような場所に陳列するほうが相応しいと考えています。
ですから、沼田商店のような場でカジュアルに展示する方が、むしろ向いているのです。