東京都足立区、日暮里舎人ライナー 江北駅すぐ目の前のところにある、焼鳥居酒屋「鶏のごんぞ」。この地元の人気焼鳥店が2022年7月、「トリノゴンゾ」としてリニューアルオープンしました。
オーナーは木村健吾さん。自身の独立開業一号店として「鶏のごんぞ」をオープンさせたのが2012年の7月15日です。そこからちょうど10年を迎えた2022年の同日に、「トリノゴンゾ」としてリニューアルオープンしました。
1階だけのこじんまりとしたお店だったのを、3階建ての多機能店舗へと拡張リニューアル。なんと焼鳥屋さんでありながら、パン工房も併設です。
この10年、どのように経営を維持し、繁盛店へと作り上げてきたのか。そして今回なぜリニューアルし、パン工房まで始めたのか。お店を訪ね、木村さんにお話を伺ってきました。
(2022年8月30日 取材)
— 今回、なぜ改装しようと思われたのですか?
ここで10年前に開業させていただいて、そのときはまだ1階だけのお店で。
2階、3階は大家さんがお住まいになられていたんですけど、今から4年ぐらい前ですかね、大家さんがご高齢だったのでお亡くなりになられて。
それで、先に僕にって、「上の階を賃貸に出したいんですけど、どうですか?」って声をかけていただいたんです。ちょうど店を広げたいなっていうのもあって、それでお借りすることができたっていうのが今回のご縁でして。
そのあとコロナがあって少し期間が開いちゃったんですけど、ようやくリニューアルオープンすることができたんです。
— トリノゴンゾさんの特徴というとどんなところにありますか?
まずは鶏ですね。宮崎の都城にある霧島鶏っていうブランド鶏を仕入れて、新鮮なかたちでお店で刺して作るというスタイルを維持してまして、それが支持されて10年間続けてこられたんだと思うんです。
あと、ここまで続けてこられたもう一つの理由として、スタートの環境が良かったっていうのはありますね。
私自身がもともと、ここのすぐ近くにあった焼肉チェーンの「牛角」で店長をしていたんです。そこも大家さんが亡くなられた関係で、土地自体が売却されてしまうことになって、商売が続けられなくなったんです。なのでちょうどそれを機にして、独立することにしたんです。
そのときに、牛角のアルバイトの子たちが何人か私の独立に向けて協力してくれて、このお店を立ち上げることができたんです。そんなふうにスタートの環境が良くて、それもこれまでお店を持続できたことの要因の一つじゃないかなと。
— 「木村さんが独立するなら、私も手伝うよ」みたいな?
そうですね。スタッフも働く場所がなくなってしまうっていうこともあって、協力してくれたんですね。
— そもそも牛角の店長だったところから、なぜ焼鳥屋として独立しようと思われたんですか?
私自身は料理人じゃなくて、牛角もフランチャイズの会社の社員として店長をしていたものですから。
牛角の本部の社員でもなかったので、店舗のマネージメントについては任されていて経験を積めたんですけど、じゃあ飲食店で自分が料理を作ってやるっていうことに対しては、そんなに自信はなかったんです。
「でも独立はしたい」ってなったとき、じゃあ自分は何ができるんだろうって考えたんです。
例えばフランチャイズの牛角だと、レインズさん(株式会社レインズインターナショナル)が本部で、その加盟店のオーナーさんは、牛角のお店をやるか、レインズさんの持っている他のフランチャイズのお店をやるか、ってなるわけです。
例えばですけど、「温野菜」とか「土間土間」とか、そういったお店をオープンさせるわけですけど、そのときにどうするかっていうと、僕のような社員の人間を引っ張ってきて、本部の直営店とかで一ヶ月くらい詰め込みでオペレーションを学ばせるんです。
その間にお店を作ってアルバイトを集めてオープンさせるっていう感じの流れなんですね。
そのやり方なら自分はできるんじゃないかなっていうのでツテを探していたら、北浦和で焼鳥をされている方がご協力いただけるってことだったので、それで詰め込みで。
— 修行されたということですか?
もうほんとに一ヶ月、二ヶ月くらいですけど、詰め込みで。
焼鳥を焼く技術ですとか、仕込みのやり方からっていうのを、牛角からついてきてくれて社員になってくれる子が一人いたので、その子と二人で一気に詰め込んでっていうかたちです。
なんとか自分たちでできる範囲のお店をってことでオープンさせることができたんです。
— それで10年確かにお客さんから支持されて、今回、2階〜3階部分を拡張してのリニューアルなんですね。開業するときは、お店を成功させる自信はありましたか?
自信は半々ぐらいだったんですけど、「なんとかインストールはできるかな」っていうところについては、自信みたいなものがありましたね。
その教えていただいた北浦和のお店、けっこう繁盛されているお店だったんですけど、最初ご訪問させていただいた時、そこで働いているアルバイトスタッフの方たちの姿を見たら、僕が牛角時代に一緒に働いたスタッフの姿にそのままスライドして想像することができたんです。
その時に「これならうまくいくかな」って感じたんです。その自信は大きかったですね。
僕自身が料理も全部やるっていうことだと、そんなに上手くいかなかったんじゃないかなと思うんです。
でもタイミングがうまく重なって、一緒に協力してくれる人たちがいたっていうのは大きかったですね。
それでオープンして、社員になってくれる子を店長にして、あとはアルバイトの子たちが5〜6人。
— そのアルバイトの子たちは、牛角時代とは関係のない別の子たちですか?
いえ、牛角時代からの子たちです。
— ああ、なるほど。みんな来てくれたんですね。
一階だけの狭い店だったので、1日4人ぐらいいれば回せる感じだったんです。
普通最初に開業する時って、人をそれなりに入れて新しい子たちを一から教育していくっていうのをやっていかなきゃいけないんですけど、そこのストレスがまったくなかったていうのが、今日まで続けてこられたことの一つの要因だったんだろうなと今振り返って思いますね。
— 今回のリニューアルで盛り込んだ、お店としての新しい要素や変化はどんなところにありますか?
リニューアル前はどちらかというと大衆酒場的なかたち。
カウンターがメインであって、テーブルは2名テーブルが少しあって、狭い席に詰めて座るっていうかたちのお店だったんです。
ご家族連れとかグループの方にはちょっと使い勝手が悪いところがあったものですから、そこを広げるために、2階のちょっと広い空間、3名以上のグループの方でもゆっくりでき、お子様連れのご家族でも食事できるような場所を作れたらいいなっていうことで、今回そうしました。
— 個室も新しく作られましたね。
3階の個室は、特別なご宴会とか集まりとかに使ってもらおうと。
メインは1階、2階にして、そこがしっかり回せるようになってから、特別なご常連さんとかそういった方にご提供できればなくらいの感じで作ったんです。
— 3階に新しくパン工房もできましたが、なぜ焼鳥屋でパン工房を?
今回、事業再構築補助金っていう、コロナ後を考えての取り組みに対しては、国から補助金を出していただけるっていうことだったんです。
自分の今やっている事業以外のところでもう一つの軸となる事業を作る。
それに対して補助金を出していただけるんですね。
たまたま2年前ぐらいですかね、何か他に柱になり得るような事業はないかなと探していたとき、食パン屋さんの開業に対してサポートをしていただける方が見つかったんです。
じゃあパン工房を作って、昼間は一階でテイクアウトのパンを売って、っていうのを今回の補助金申請の事業にしたら、それが採択されたんです。
今回のリニューアル自体をパン事業に結びつけて、パン工房を作らせてもらったんです。これは来月の末(2022年10月末)ぐらいに稼働させようと今、準備しているところなんですが。
— 焼鳥屋さんでパンを作るって、なかなかユニークですね。
そうですね。事業再構築なので同じことをするっていうのではなかなか採択されない。
ただ、飲食、食を扱うっていうことでは一緒ですし、テイクアウトで街の方たちにしっかり支持されるものを作っていけるなら、やる意味があると思えましたし。
夜間は焼鳥屋ですけど、昼間は1階の客席の部分が空いているわけで、そこにパンを並べてテイクアウトで買っていただく。
一階の入り口の左に棚を作ってもらったんですけど、
そこにパンを並べて、入り口の右側にある冷蔵庫もサンドイッチを入れるものとして置いて。
食パンをメインにしながら、サンドイッチとかも作ってどれだけ売り上げ伸ばせるかなと、今考えてるんですけど。
— 面白いですね。ちなみに今回のリニューアルを山翠舎に頼まれたのにはどんな理由が?
10年前の創業のときにお世話になったっていうのがあるので。
古木を使って風合いを出したお店の雰囲気もすごい気に入ってたので、そこを上手く活かしながら新しいお店っていうことに対してご提案をいただけるのかなっていう期待があったものですから。
信頼ができるっていうところですね。
— そもそも10年前に初めて山翠舎に内装を頼んだ時は、何がきっかけだったんですか?
何も知識がなくてわからなかったので、新しく飲食店を開業したい人向けに出てた雑誌を買って読んでみたんですね。その雑誌に山翠舎さんの広告があって、電話したら営業の方が来てくれてっていうのが最初でしたね。
その時はまだ他の会社さんにも相見積もりとか取ってたんですけど、山翠舎さんのご提案が一番良かったので、お願いさせていただいたんです。
— 今回のリニューアルで気に入っている内装のポイントはありますか?
1階と2階で雰囲気が少し違うと思うんですよ。
1階はカウンターをメインとして、オープンキッチンで距離の近い接客ができる、創業した時の雰囲気も残しつつっていうかたちにして、2階に上がってきたら木の風合いがまた変わって、ご家族連れのような方にもご納得いただける。
そんなお店にできたかなって思ってまして、気に入ってますね。
— これからの夢やビジョンはありますか?
10年前にここでお店を始めたのも、住宅街立地の、都内とはいえどちらかといえば長閑な場所で、周囲にうちのような利用動機の店がなかったからなんです。
実際10年やってきて、お客様の利用動機を広げられるお店が出来上がったと思いますので、まずは今以上にここをお客様で埋めることですね。
そして「あってよかった」と言ってもらえるお店にしていきたいですね。
— 今日はありがとうございました。