山翠舎には面白さがある。だから25年以上、「お店づくりのパートナー」として選び続けてきた
winds長野店をはじめ長野県で地域密着型のレストランを運営する株式会社東翔。同社と山翠舎との関係は25年以上にも及ぶ。
同じ長野県で1930(昭和5)年に木工所としてスタートした山翠舎は、積み重ねた経験や知見を活かし「空間づくりのパートナー」として同社の店舗づくりに携わってきた。そんな両社の出合いや関係について、同社が運営し山翠舎が内装を手がけた長野市の「Winds長野」で、代表取締役社長 田中正之さんに語っていただいた。
長野県で30年以上、地域に愛される飲食店を経営
私たちは、料理を召し上がったお客様の「おいしい!」という笑顔を大切にしながら、30年以上、地域密着型の飲食店を経営しています。
これまで長野県内で18店舗ほどを立ち上げ、ここ「Winds長野」も長野駅前で30年以上営業。
若い頃に来ていたお客様が、今お孫さんといらしても当時を懐かしめるよう、あえて「変わらない」をコンセプトに運営しているんです。5年に1回でも、3年に1回でも、思い出してお店に来ていただければ、そのお客様は常連さんだと私は思っています。
もう25年くらい前でしょうか、新規店舗の立ち上げを企画していた際、長野のある設計会社さんにお店の設計・施工をできる建築会社をピックアップしてもらいました。
そこに含まれていたのが山翠舎で、それからお付き合いが始まりました。
私たちの店舗は設計・施工のプロと話し合いながらコンセプトを作っていくのが特徴で、建築会社さんからのご提案を重視しています。それまでお付き合いのあった地元の会社さんもそれなりの提案はしてくれましたが、予算や納期などに縛られた「ありふれた提案」という印象が否めませんでした。
豊かな発想にもとづく提案ができ、一緒にお店を作れるパートナーを探していたタイミングで出合ったのが、山翠舎だったのです。
山翠舎の魅力は、知識と経験にもとづく豊かな発想力
出合いから約25年、山翠舎とはいろいろなプロジェクトをご一緒してきました。
ここ「Winds長野」も、以前内装の改修をお願いしています。
山翠舎からのご提案で床をすべて桜の木で整え、テーブルや椅子、壁紙などはアメリカからの輸入品にしました。コストは通常より多少かかりましたが、仕上がりは素晴らしく、結果的に適正な価格でトータルバランスの良い内装にしていただけたと思っています。
今や山翠舎の代名詞ともなった「古木」* を使った店舗もあります。
確かあれは山翠舎が古木に力を入れ始める前のことでしたが、創作料理の店舗に古木を活用することにしたのです。
当時はまだ創作料理が一般的ではなく、店舗にもこれといった定番の形式がなかった頃。内装のベースにはいろいろな用途に合う木を選び、その中の主役となる素材として古木を使って、丁寧に、想いを寄せて作っていただきました。
こういった堅実な仕事をしてくれることが、長くお付き合いしている理由の1つです。
さらに先代社長で現会長の山上建夫さんが、こちらの要望にじっくり耳を傾け、膝を突き合わせて話をしてくれたことで、信頼が積み重なっていきました。
山翠舎には地元・長野以外での経験もあり、未知の分野を構想する発想力が豊かな点にも魅力を感じます。結果、これまで立ち上げた約18店舗のうち6店舗に山翠舎に何かしらの形で関わっていただいています。
「古木」*
古民家に使われていた、地域や家族のストーリーを宿す古い立派な木材。その来歴や入手地を記録し、トレーサビリティを確保したものを『古木™』(こぼく)と定義し、商標登録している。
これから先も生き残るために、山翠舎と「面白い関係」でいたい
飲食店って、計画を立てている時や建築中は楽しいんですよ。でも、勝負は店舗がオープンしてからなので、そうなるとワクワクよりも苦労の方が多い。ただ、この苦労があるからこそ、飲食店経営は面白いとも言えます。
昨今では、飲食業界を襲っている新型コロナウイルスも脅威です(取材時:2021年9月)。
何十年とこの業界にいる私でも前例のないリスクと言わざるを得ない。2020年5月の1回目の緊急事態宣言時にはお客様がまったく来なくなり、すべてを投げ出してしまおうかという考えが頭をよぎったこともありました。
しかし、この時代を生き残るためにはある程度の冒険は欠かせない。
ただ待っていても気力が落ち、運転資金も底をついてしまうので、現在、善光寺の周辺に新規店舗の出店を計画しています。
1つは、明治時代の蔵を現代風に蘇らせたカフェで、ベーカリーの自家製パンが一押し商品です。もう1つは、スタジオ兼オフィスビルの1階に作るテラス付きのカフェ。ビュッフェスタイルのランチやこだわりのコーヒーなどを提供する予定です。両方とも山翠舎にプロデュースから施工までしていただくので、出来上がりをとても楽しみにしています。
飲食店の経営は、願望や希望を言う前にとにかく生き残らなくちゃいけない。
でも、どうせ生き残るなら、楽しく社会に貢献できる形で生き残りたい。そのために山翠舎とは「その事業、なんか面白そうだな」と言い合える、型にはまらない「面白い関係」でいたいですね。これからも。